すり合わせについて - 曰比谷公園
2017/09/30 (Sat) 19:05:01
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ある役をもらったときに、たとえばある家族の父の役だとして、私は妻、娘、息子とやりとりが場面として出てきます。
私が思うには、役の父親は、妻、娘、息子と長い年月のやりとりがあり、いろいろ家族に対して思うところがあると思うのです。その過去の積み重ねが現在の私と妻、娘、息子のやりとりを決めていると思うのです。
ですから、共演する方々とは、過去の歴史をすり合わせておきたいと思うのです。
ただ、すり合わせしようと声をかけても、役者さんの性格により、付き合ってくれる人もいますが、特に若い女優さんはあまり相手にしてくれません。
これは、やはりお願いしてでも、すり合わせ、話し合うべきなのでしょうか?
家内との間でお互い思うことが違うのはまずい気もするのですが…
Re: すり合わせについて - 【ウィナーズ☆ラボ】
2017/10/01 (Sun) 00:27:39
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そういうのに乗ってきてくれないのは、もちろんメンドクサイということもあると思いますが、俳優の本能として、そういうことは俳優だけでやるべきではない、やってはいけないと感じているからだと思います。
俳優は、その作品の「作者」の創り上げた世界の住人です。
その作者(シナリオライターや監督)がそういう「過去」があったと、つまりそういう「人物設定」があったとしているなら、それは俳優として忠実に理解しておくべきですが、それ以外は必要ありません。
なまじいろいろ考えてしまえば、「作品世界」を壊してしまったり、つじつまが合わずにはみ出してしまうことになりかねません。
そういう「過去設定」があったほうが演じやすいというのはそうかもしれませんが、それなら作品世界の「創造主」である作者を交えて行うべきです。
物語の中のメインの人物は、みんな「過去」を抱えて登場してきます。その「過去」があるから「現在」その行動をとろうとするわけです。
その行動目的、つまり「したい!」と、その理由はたいていは明確に台本の中に描かれているはずです。
たとえば、医療ミスで子供を失った「過去」があって、「現在」病院に復讐しようとしているとか。
そういう現在の行動の目的の「理由」となる過去以外、ドラマを演じる上で役に立つものはありませんし、考える必要はありません。
もちろん、演じていて「なんでこんなことやりたいと思っているのだろう?」と役が分からなくなることはよくあります。そういう時は、その行動の理由は、もしかしたら連ドラなどでは、後のほうの回にその理由が「回想」などで描かれてくるのかもしれませんね。
あらかじめ人物の過去をあれやこれや考えるのではなく、それが気になったときに、適宜「作者」に確認をすればいいことです。
まあでも「作者」は全体を観てOKorNGを判断しているので、たとえその「過去」を知らなくても、作品世界に合わない演技をすれば、その都度指摘されるでしょうから大丈夫です。
プロ俳優は「作者」を信頼して、まるでその「作品世界」の中に生きているように演じるのです。自分だけで人物像を造り上げようとしてはいけません。
また人は矛盾を抱えて生きています。過去がそうだから必ずしもそれに基づく行動をとるとは限りませんし、誰かと一緒にある経験をしたからといってそれについてお互いが全く同じように考えているとも限りません。
ですから、過去の経験の「すり合わせ」というようなものは、基本的に台本で明らかにされているもの以外は、必要ないのです。
逆にもし「過去の経験」や「人物関係」などの「設定」だけを与えられて、自由にアドリブで演じて下さい。という作品ならば、その「設定」はしっかり共通認識として理解しておく必要はあるでしょうね。しかしそういう作品はめったにありませんし、たまにあってもただの実験作品であり観客を楽しませられるものにはなりません。
「作品」とはどんなものであっても(美術や音楽などでも)、「作者の視点」から観た世界であって、その視点を観客が共有できるからこそ、面白いのだと私は思います。
演じることに不安が生まれてきたときは、まずその「視点」が理解できているか?そこをしっかりと確かめてみましょう。
身震いするほどの答えがそこに見つかるかもしれませんよ。
Re: Re: すり合わせについて - 曰比谷公園
2017/10/01 (Sun) 19:11:31
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いつも丁寧にご指導いただき、本当にありがとうございます。目からウロコが落ちた感じです。
確かに、私は以前から、ある演出家から「余計な演技をするな」とよく叱られます。なるほどという思いです。
また、一からやり直します。